
小学校1年生の息子はサッカークラブに通っている。
先日、いつものコーチに他の予定があるとのことで、別のコーチが来てくれることになった。
名前を仮にSさんとしておこうか。
やっぱり人が違うと、教え方も違う。
いつものコーチは、子供のプレイにあまり口を出さず自由にやらせるタイプ。
反対にSさんは、プレイを止めて全体を見ながら流れを作って戦略を説明してくれるタイプのコーチだった。
やっぱり人によって変わるものだなぁと興味深く見守っていた。
あっという間に時間が過ぎて、終わりのミーティングが始まった。
Sさんは、まだここの生徒たちのことをよく知らないので、自身のことを話してくれた。
サッカーが大好きで、プロを目指していたこと。
最後まで頑張ったけど、結局プロにはなれなかったこと。
そして、プロになるための練習では、正直サッカーが楽しくなかったこと。
ぼくはそれを聞きながら、涙が止まらなかった。
夢が叶わなかったのは、残念だったかもしれない。
でもね、小学生に囲まれて、教えながらサッカーをしているSさんは、すごく楽しそうだったんだ。
大好きなサッカーを、楽しく続けられているんだから、これはこれで一つの幸せのかたちなんだと思った。
夢が叶わなかったと卑屈になるわけでもなく、サッカーに携わりながら、たどり着いた場所だから。
正直、めちゃくちゃかっこいいと思った。
新聞には載らない、夢に破れた、とある少年の物語。
報道されないから知らないだけで、そんな物語は、世界に山ほどあるのだろう。
みんな夢に折り合いをつけて、それぞれの人生と向き合って生きている。
ぼくは正直、華やかなところだけに価値があると思い込んでいた。
光あふれるスタジアムで、トロフィーをかけた試合、高いチケットが飛ぶように売れる試合こそが価値があるゲームだと考えていた。
でもSさんの話を聞きながら、考えを改めた。
観客が誰もいない、少年サッカークラブの練習試合にも、同じ価値があるんだと気付かされた。
好きなことを、夢中になってやっているところに価値の上下はない。注目度や値段は関係ないし、みんなの価値観に自分の価値観を合わせる必要は全くない。
おいしいと思ったジュースの味は、あなたにとって本当においしいわけで、世界累計100億本とか売れてなくてもいい。
自信を持っておいしいと言えばいいし、飲めて幸せな気持ちは本物だから。
レビューを参考にするのはもちろんいいけれど、字面に惑わされ過ぎないようにしてください。
あなたがいいと思ったことを、どうか大切にしてくださいと、ぼくは思うのです。

関 宏貴

長野県生まれ。ベストライフなんば利用者。 地球を冒険してから、京大、Appleなどで働き、ベストライフに辿り着く。 うつ病、強迫性障害、てんかん、ASD、HSP。ささやかでシンプルな生活を好む。 ベストライフで書いた著作に「HSPさんが自分の魅力に気づくための15のヒント」がある。