
強迫性障害は、自分の頭の中だけで不安をどんどん膨らませてしまう病気だ。誰かが「大丈夫だよ」と言ってくれても、自分の中で「でも、もしかしたら…」と終わりのない疑念がぐるぐると回り続ける。脳に不具合が起こっているから、確信できない。
確認するたびに、またやってしまったというストレスだけが蓄積していく。
「こんなことを一生続けるつもりか?」
だって怖いから。
時間というのは、永遠の過去から永遠の未来へと静かに流れている。その中で、僕たちに与えられた時間は、わずか100年前後。
その中で不安に縛られ、苦しんでいる暇はあるか? せっかく与えられたこの時間を、もっと楽しいことで満たすべきじゃないか?
「このまま死んだら、何が残る?」と自分に問いかける。
「本当に大切なものって、なんだろう? やりたいことって、確認じゃないよな」
お金や物をいくら持っていても、人生を終えたら何も持っていけない。大切にしている家具も、スマホも、何もかも全てこの世界に置いていくしかない。
残るのは思い出だけなんだ。誰かと過ごした時間、笑ったこと、泣いたこと、感動したこと。そういった瞬間だけが残る。
そう思ったら、自分の頭の中で作り出している不安が、急にちっぽけなものに感じられた。もちろん、そう簡単に不安が消えるわけではない。でも、その不安にばかり時間を使っていることが、もったいなくて仕方ない。
本当の意味で蓄えられるものは、「こころの豊かさ」だけだと思う。何かを所有するのではなく、何を感じ、どう生きたか。
それこそが、人生の本質じゃないだろうか。執着を手放して、心を軽くして、残された時間を心地よく過ごしたい。
もちろん「心を軽くして生きる」ことは簡単なことじゃない。強迫観念は、理屈では消えてくれない。それでも、「無駄にしてはいけない」という思いが、少しずつ心の奥の抵抗力を広げてくれる気がする。
不安に襲われるたび、こう考えるようにしている。
「確認するのは楽しいか?」
「楽しくないからやりたくない」
一歩引いて見つめると、心に少し余白が生まれる。その小さな余白をきっかけにして、不安を撃退する。
完璧にはできなくていい。ただ、今この瞬間を、少しでも丁寧に感じて生きたい。青空がきれいだと思ったら、それを素直に味わいたい。誰かと交わす何気ない会話にも、ちゃんと心を向けていたい。

関 宏貴

長野県生まれ。ベストライフなんば利用者。 地球を冒険してから、京大、Appleなどで働き、ベストライフに辿り着く。 うつ病、強迫性障害、てんかん、ASD、HSP。ささやかでシンプルな生活を好む。 ベストライフで書いた著作に「HSPさんが自分の魅力に気づくための15のヒント」がある。